Interview: Takumi Yoshinaga, Emiko Sunaga, Yojiro Ogawa (2004-09-21) by Dengeki Online
From Sega Retro
This is an unaltered copy of an interview of Takumi Yoshinaga, Emiko Sunaga, Yojiro Ogawa, for use as a primary source on Sega Retro. Please do not edit the contents below. Language: Japanese Original source: インタビュー『きみのためなら死ねる』前編 - 電撃オンライン |
An interview with Sonic Team members Takumi Yoshinaga, Emiko Sunaga and Yojiro Ogawa, the respective director, designer and producer of Feel the Magic: XY/XX. At the end would be a link to an mp3 music file of the game's main theme.
This article contains untranslated text or images that are written in Japanese.
The original text should stay, but please improve the quality of this article by providing a supplementary English translation. |
- 日本語
- English
- Roumanji†
――とにかく、一度聞いたら忘れられないタイトルですよね。 小川:衝撃でしょ、このタイトルは。 ――発表当時は『Project Rub(仮)』という名前でしたよね。正式にタイトルが変わったのはいつですか? 小川:ずーっとミーティングをしてきて、いろんなタイトル案が出たんですが、どうしても今までどおりのゲームっぽいものになっちゃってね。 吉永:そうですね。いかにもゲームのタイトルっていうものが多くて。 小川:もちろん、カッコイイものもたくさんあったんですけど、なんかインパクトにかけるねって話をしていたんです。せっかくDSという新しいハードが出てきて、新しいものを見せようとしてるんだし、なんかもう……。 ――なんかもう? 小川:ありえないぐらいのインパクトをまず持ってきたいなと。 吉永:「死」とか(笑) ――それで『きみのためなら死ねる』(笑)。 小川:タイトルに「死」って入っているのがすごい(笑)。仕事のメールのやり取りをしていると「きみ死ね」ってタイトル名でくるんですよ。 吉永:「死ね」って書いてあるメールは、わりとね……ショックでかいですよ。 ――ぼくのところにもきましたよ、「きみしね」メール(笑)。広報の方が『Project Rub(仮)』の素材お送りしますって……やって来たのが「きみしね」ってかいた圧縮ファイル。あ~ウイルス付きだよ……って思いましたから。 吉永:やった。予想どおり(笑)。 ――「しねる」じゃなくて「しね」で終わってますからね。「きみしね」は、メーカー推奨の略称ってことでいいんですか? 小川:いいですよ。あ、ひらがなでお願いします(笑)。 吉永:聞いたら忘れないっていうのがタイトル名の第一条件だったんです。ほかにも候補はいくつかあったんですけれども、みんなが翌日まで覚えていたのが……。 小川:……これしかなかった。 一同:わはははは。 ■ソニックチームとUGAのカルチャーの違いってなによ! ――吉永さんといえば『スペースチャンネル5』シリーズ(※1)が有名ですよね。『パート2』を作られたあと、あまりお名前をお聞きしなかったんですけど、その間はどんなゲームを作られていたんですか? 吉永:えーと、……と……(笑)。 小川:なんで、どもるの。 ――あ、じゃ、じゃあ、須永さんは、『きみしね』では、どんなことをやってらっしゃるんですか? 須永:みんなから出てきたゲームのアイデアを「実際にゲームにするには?」というところでまとめる作業をしています。もちろん吉永と相談しながら。 ――須永さんは、以前にどんな作品に関わられていたんですか? 須永:『スペースチャンネル5 パート2』から制作に参加させていただいて、そのあとは………ええと……。 小川:なんで、そっちもどもるの(笑) 吉永:暗黒の時代がありましてね……、ほされてたんです(笑)。 ――吉永さんと須永さんがUGAのころに? とても気になりますね。 小川:ないから、そんな時代。昨年の秋頃に、ソニックチーム(※2)とUGA(※3)が合体しましたよね。 ――ああ、そうですよね。 小川:ちょうどその頃に、DSの話がきたんです。この新しいハードで、何ができるかをソニックチームの企画全員で話をしていて……もう、もの凄くいろんなアイデアを出していたんですよ。 吉永:「こんなにアイデアがあるんだ」って、ぼくもいっぱい見せてもらいました。 小川:で、新ハードで新しい機能もあるし、最終的に誰に任せてみようかって話になったとき、今までソニックチームはソニックチームっぽいもの、UGAは、UGAっぽいものしか作ってこなかったんで、ふたつの個性が合体したようなものを作ろうよと。 ――そこで、吉永さんに白羽の矢が立ったと。 小川:はい。「ここは吉永にまかせてみよう」という話になったんです。その結果が、これ(笑)。 吉永:なんか、ひっかかる言い方のような…? 小川:だから、『きみしね』は、ソニックチームとUGAの個性が合体したテイストを持っているんですよ。 ――なるほど。……でも、じつは、今いただいている画面写真を見る限りでは、ソニックチームのテイストはあまり感じないんですが? 小川:あ、やっぱり(笑)。って、いやいやいや、あります、全然ありますよ! 吉永:ゲームが進んでいくと、ソニックチーム的なソリッドな部分が結構出てきますよ。まあ、たしかにこの段階で画面だけ見ると、「それは、どこだ?」っていう雰囲気はあると思うんですけれども。 ――いわゆる、プレイするとわかるってやつですね? 吉永:はい。ソニックチームとUGA…というよりは、私たち吉永とか須永ですね、開発チームのひとりひとりのゲームに対する考え方や、ゲーム制作のスキルの積み方、楽しさの求め方は、必ずしもいっしょではないんです。少しずつ違うところがあるんですが、でも目指している方向は同じ。ただ、ゲームを制作をするうえで、目標に向かって歩いていくその場所が、道の真ん中だったり、はしっこだったり、塀の上だったりとかいろいろなわけです。『きみしね』では、それが、いい感じに混ざりあって、ゲームの色になってるんじゃないかと思ってます。 ――お話を聞いていて、すごくいい感じで進んでいるのがわかりますね。ただ、これはあくまで勝手なイメージなんですけど、中さん(※4)はこういうゲームを好まれないのかなと思ったんですけど。 小川:いや、そんなことは全然ないですよ。今回この企画書を提出したときも、「今までのソニックチームにない感じですごくいいよ。これで勝負しよう」みたいな話になりましたから。じつは、もうちょっと固いゲームの企画もいっしょに出して、「どうでしょう?」みたいな話もしたんですけどね。 吉永:そうですね。様子見というか(笑)。中さんと仕事をするのは、はじめてだったんで、一応手堅いやつを、って感じで。まあ、基本的にはぼくは失うものはないですから(笑)。怒られるのを前提で両方用意したら…。 小川:『きみしね』が採用に(笑)。今までにないタイトルだし、セガ自体も社長が小口さん(※5)になって、新生セガを、そして新生ソニックチームをアピールするのにもいいんじゃないかと。 ■やっと、ゲームの話に突入! ――じゃあ、そろそろゲームの中身についてお聞きします。先ほどのお話にもありましたけど、この企画はDSありきで考えられたものなんですよね? 吉永:そうですね。まずDSでしかできないものを念頭に置いて考えました。別のハードでもできるんだったらあまり意味がないなと。 ――それが、DSのタッチパネル機能を使ったゲームですね。 吉永:本当に、「タッチスクリーンしか使いません! ボタンはひとつも使いません! というくらいタッチスクリーン具合、DS具合をアピールしたいんです。タッチパネル機能を足したゲームではなく、それだけでゲームが1本成立するようなやつを。 ――え! まったくボタンは使わないんですか? 吉永:ポーズボタンとしてスタートは使いますけれども、あとはまったく使わないつもりです。タッチペン(※6)とタッチスクリーンですべてがまかなえるものにしたいですね。 ――どんなプレイ感覚になるんでしょうね? 画面写真を見ると、ちょっと'70年代のテイストがありますが……ゲームの説明文もなんか、変ですし。 小川:そうですか? ――変わってますよ。読み上げましょうか……。 この衝撃的なタイトルのゲームとは……。 とっても熱くて、ちょっぴり切ない、ある少年が起こす愛の奇跡の物語です。 ナイスバディの魅力的な彼女。 彼女のまわりには、いつもすごくイケテル男たちが。 主人公である少年はいわゆる"ぱっとしない、ふつうの男の子"。 彼は彼女に一目ぼれをしてしまいます。 そして、彼はいつか彼女に振り向いてもらいたくて、色々な試練に立ち向かうのです。 衝撃と感動のラブストーリー。 『きみのためなら死ねる』 愛する人のために、あなたは本当に命をかけることができますか? これが、どうゲームになるのか…… う~ん、さっぱりわからない! 小川&吉永:やっぱり、わからないかぁ……。 ――だいたい、どうして、DSのタッチパネル機能で、ラブストーリーを表現しようと思ったんですか? 吉永:そうですね、まず一番最初のとっかかりとしては、「タッチパネル機能で何ができるか?」ってことですね。タッチスクリーン自体は駅とかにありますよね? ――そうですね。最近は、券売機とかそうですよね。 吉永:"さわる"っていう行為は、日常生活のなかにあるんですけど、"さわったものを動かしてこする"っていうのはあんまりないだろうなと。DSのタッチパネル機能で一番新しいのは、多分そこだと思うんです。"さわるだけじゃなくこする"っていうことなんじゃないかと。 ――そう言われるとそうですよね。 吉永:「じゃあこすって楽しいものってなんだろう?」って考えると、別に窓ガラスとかこすっても楽しくない(笑)。やっぱり女の人にさわったりとか、頭をなでたりとか、そういうコミュニケーションが楽しいんじゃないかと思って。 ――わかります。すご~くよくわかります。 吉永:ゲームというよりは日常生活、生活の基盤的なところ人間の根本的な喜びみたいなものが、ゲームで、DSなら再現できるんじゃないかと思ったんです。やっぱり何がなでたいといったら、犬もたしかになでたいけど、女の人にさわったり、なでたりするのがいい。そういうところから発想が始まったんです。 ――わかります。すご~くよくわかりますよ~。 吉永:あとは、言葉的には「RUB(こする)」のラブと「LOVE(愛)」のラブがかかっています。もちろん、こするだけのゲームではないんですけどね。まず、それを中心にゲームを組み立てていったんです。 小川:さわるっていうのは、本当に人間の基本的なコミュニケーションのひとつですから。あと、ボクの永遠のテーマが愛なので(笑)。 吉永:そうなの? 小川:ホントですよ。ボクは会社に入るときも"愛"とか"LOVE"とか言って入社してますから。だから、愛を表現するのに、DSを使えれば、DSならではの感じが出るんじゃないかなって思いましたよ。 ――須永さんは最初、『きみしね』の企画を見てどう思いました。 女性から見て、「なんてもん作るんだ!」と思ったのか、 それとも「意外とこれは面白そう」みたいな感覚ですか。 須永:そうですね。私は入社1年目からずっと吉永といっしょに仕事をしているんで、吉永テイストっていうのがわかっちゃってるんですよ。だから「これは作りたい!」と思って志願しましたね。 小川:たしかに、吉永が暴走しすぎないように、周りの女の子のスタッフでだいぶ止めてるんで。 須永:それはありますね(笑)。あと、ゲーム中では女性をさわるんですけど、プレイヤーが女性でも、いやらしく感じないようにとか、そういうところはすごく気をつけてます。プレイしてイヤな気持ちになってしまうことがないように。そこは私とそのほかの女性スタッフで気をつけていますね。 ――ということは、女性がプレイしても楽しめるんですか? 須永:そうですね。女性スタッフの割合もほかのゲームより大きくて、半数くらいは女性です。ゲーム中の女性の動き方も、女性のデザイナーさんが、実際に動いてみて、「こういう風にして」って発注してますから。 ――へえー。まだ開発途中だとは思うんですが、感触としてどうですか?実際なにか新しい感覚がありますか。 吉永:やはり直接さわるというタッチパネル機能の威力というか、それを利用して「ああ、彼女と仲良くなってる」って感じはしますよ。その辺のニュアンスが結構出てきてるんじゃないかと思います。 ――いちゃついてるみたいな感覚ですか? 吉永:はい。ホントにいちゃついてる感じというのが。いわゆるゲーム的にデフォルメされた女の人といちゃついているというよりはライブ感覚でいちゃついてる感じがでている。 須永:やっててジワ~ッと来るものはたしかにありますね。 ――それは女性からみても感じるんですか? 須永:はい。やっててちょっと恥ずかしくなるような感覚がありますよ。 吉永:あと、女の子のリアクションも、いわゆるゲーム的なリアクションではないんです。 ――普通の女の子っぽい反応みたいな感じですか? 須永:はい。 吉永:まあ不必要にリアルっていうのとはまたちょっと違うんですけれども。今までの恋愛ゲームとかの反応とはまた違ったものがあると思います。 須永:ちょっと電車のなかでは……恥ずかしくてできないですけどね。 吉永:そうですね。電車の中では…。 小川:(さえぎって)いや、電車もオススメですよ。DSのカタチがそもそもカッコイイんで、パカって開いてこうやってると(スタイラスを使って画面に何かを書く動作)、モバイル使って一所懸命仕事してるみたいに! 一同:(爆笑) 小川:「すごい、この人一所懸命仕事してるなあ」って見えるんで、ぜひ電車でもプレイしてください。 ――じつは女の子こすってても(笑) 小川:女の子こすってても! ――仕事に見える(笑)。 小川:仕事に見える! ――具体的なタッチパネル機能なんですが、取る、撃つ、つなぐ、扇ぐ、さわる、こする……とくに"つなぐ"とか"扇ぐ"ってどういう操作方法なんでしょうか? 吉永:えーと(笑)。 ――これ、もしかしていい質問だったりしますか? 吉永:はい(笑)。ホントはいろんなことを言いたいんですけどね~。 ――うまく想像できないんですよ。スタイラスでこうモノとモノを結んでいくとか…。 小川:がんばって想像していただいたものプラスαってとこですかね。 ――うーん、楽しみですね。 ■ユーザーがすぐに見つけられるグラフィックとサウンド! ――では、グラフィックとサウンド面についてですが、やっぱり、'70年代テイストは意図的に? 吉永:そうですね。たぶん、みんなが使ってくるであろう色使いをできるだけ使わないようにしました。トリコロールの3色(青、白、赤)をできるだけ使わないようにと。あとは、キャラクターをシルエット表現してるんで、それを一番引き立たせるような背景ということで、こういう色彩を選んだんですけど。 ――女の子の顔をシルエットにしたのは? 吉永:やっぱり恋愛ものなんで、あんまり具体的な顔とかにしちゃうとユーザーの好き嫌いがでちゃったりするかなと思って。キャラクターの好き嫌いで先入観を持ってほしくなくて、全体的にユーザーへの情報量を極力削ってるんですよ。ユーザーが想像できるスキマを残しています。 ――自分だけのキャラを思い描いて楽しめる? 吉永:はい。それに、今のゲームって、こういう世界観とかこういう設定だっていうのを読むのがすごい大変なものが多くて……。ゲームに届くまでに28ページみたいなものが(笑)。そういうのがイヤだったんで、気楽に入って気楽に楽しんでもらえたらと思ってます。 小川:最近のゲームって、だいたい長い設定とか読んで、腰をすえないとだめじゃないですか。でも、みんな忙しいですよね。だから、たとえば映画のように、2時間のなかでちゃんと楽しめるものにしたい。手軽で、なおかつある一定の面白さっていうのを今のユーザーは求めているんじゃないかと思うんで。 ――DSは携帯ゲーム機ですしね。 小川:パッと遊べて、しかも自分が感情移入しやすくっていうのを考えて人物をシルエットにしたり。あと、なるべく本体と同時に発売したいなぁと思ってるんで。 ――え! そうなんですか? 小川:本体の発売日近くには、結構いろんなタイトルが出てくると思うんですが、そのなかで見て、特に目立つものを。パッケージやタイトルをパッと見て、ユーザーの方に、明らかにこれ『きみしね』だよね、って思ってもらえるようなものを選んだんです。 吉永:かなりふっきれたものを(笑)。みなさんがほかのゲームと迷わないってのがポイントです。それと、ゲームの開発って、開発の最初のころにみんなで「コレはありだよね」ってワーッと盛り上がるんですよ。でも商品化が近づいてくると……「やっぱホントはコレなしだよね」ってしぼんじゃうことがよくあるんです。今回はそれが、最初に「いいよね」って盛り上がったのがそのまま商品の形になって世の中に出るはずです。 ――サウンドもこの画面にあったようなものになるんですか? 吉永:そうですね。 小川:一風変わったサウンドを用意してますよ。今聴けるんじゃない? 吉永:あ、そうですね。CDはどこにあったかな? 持ってきましょう。 ――ほんとですか!? ありがとうございます! 吉永:サウンドは耳に残るというかですね、タイトルといっしょで、1度聞いたら忘れないメインテーマをひとつドカンと用意してます。あとは、ゲーム機ではあまり聞かないタイプの音の構成、とくに携帯ゲーム機では聞かないタイプの音の構成ですよ。 ――それってウェーブマスター(※7)さんですか? 吉永:今は、もう同じセガですが。 小川:『スペースチャンネル5』のサウンドディレクターをしていた人にお願いしてます。 吉永:まあテイストは全然『スペースチャンネル5』の曲ではないんですけど。 ……ここで、吉永さんCDを取りに行く…… 吉永:CD持ってきました。どうぞ! 「ン~ンン~ン、ンンンンン~♪」←クリック! ――こ、これは……。