Interview: Satoshi Mifune (2002-02-06) by Sega.jp
From Sega Retro
This is an unaltered copy of an interview of Satoshi Mifune, for use as a primary source on Sega Retro. Please do not edit the contents below. Language: Japanese Original source: Sega.jp: Creators Note |
セガのゲームを作る、あんな人、こんな人。 どんな人が、どんなことを考えて、セガのゲームは生まれるのか? それぞれのクリエイターが持つ“こだわり”や“発想”、開発中に起きるエピソードなど、普段はなかなか聞けないことを、直接会って聞いてみよう! というこのコーナー。 第1回となる今回は、アーケードで人気のサッカーゲーム『バーチャストライカー』シリーズのプロデューサーとしておなじみ、BINちゃんこと三船 敏 氏(アミューズメントビジョン)に、先日ゲームキューブで発売された最新作 『バーチャストライカー3 ver.2002』 の話題を中心にお話を伺いました。 三船 敏(みふね・さとし) (株)アミューズメントヴィジョン取締役 『バーチャストライカー』シリーズ プロデューサー 1967年生まれ。O型。 最近ハマっているものは、ボール蹴りと読書(宮本輝)。 代表作品は、『バーチャストライカー』シリーズ、『バーチャNBA』、『GPライダー』、『ターボアウトラン』、『ダイナマイトダックス』など。 —— 『バーチャストライカー』を支持しているユーザー層は、どれくらいの年代の方が多いんですか? 三船■『バーチャストライカー』を支持してくださる方々は、アーケードではけっこう年齢層は高くて、背広着たサラリーマンの方々も多いですね。それからサッカーという題材からインストラクションを読まなくても遊べるので、外人のプレイヤーも見かけますね。 そういえばスペースワールドという任天堂さんのイベントにゲームキューブ版を出展したんですが、父親と小学1年生くらいの男の子が対戦していたんですよ。男の子の身長はモニターにまでも届かなくて、見上げるようにして必死にやってるんですね。 それで試合の中身を見てみたら、前線にボールを放り込むんだけどそれ以上前には選手いないよ(笑)、って感じの単調なプレーの繰り返しだったんです。やっぱり小学生だったら、こんなもんなのかなって思ってコントローラー見てみたら、実はその単調な攻めをしてたのは父親だったんです。男の子がボール持ったら、ディフェンスラインでボールまわして組み立ててました! あれは驚きましたね(笑)。 低年齢層のほうが大人よりゲーム知ってることも多いですから、ゲームキューブだからといって低年齢層を過剰意識しすぎずに、わかりやすい表現を選んだほうがいいと思いますね。逆に大人のほうに気をつかったほうがいいのかも(笑)。 —— そういえば、最近ハマっているのは “ボール蹴り” ということですが(笑)、三船さんは子供の頃からサッカーは、やっていたんですか? 三船■中学校と高校の1年くらいまでサッカー部で、中3のときはレギュラーで試合出てたんですが、最後の大会の試合で外されてしまいました……。 それからセガに入ってからは、社内のサッカー同好会に入会しました(笑)。 もちろんユニフォームもあって、当時のイタリア代表のレプリカでした(笑)。 今は近くの公園で子供とサッカーボールを蹴ったりして遊んでいるんですが、子供があきちゃってもひとりでボール蹴ってますね(笑)。 —— では、ゲームキューブ版『バーチャストライカー3 ver.2002』のお話を伺いたいのですが、アーケード版『バーチャストライカー3』との一番の違いって何でしょう? 三船■アーケードでやるよりもゲームキューブ版のほうが “余裕がある” のが一番の違いかな? アーケードはどうしても短い時間で成立しなければならないので、ボールの取った取られたというのを攻守激しく入れかわるようにせざるを得ないんです。 限られた時間でどれくらい相手のゴール前まで行ってチャンスをつくったのか、そういうことが重要なんです。 例えば1コインで遊んだときに、お互いにシュート1本ずつでした、1回ずつお互い相手のゴール前まで行きました、ということで終わったらゲームとしてさすがに成立しないわけですよ。 で、そうなるとどうしてもゴール前まで早く、そして攻守の切り替えも激しい方がゲームとしておもしろいんですよね。 それで、コンシューマーの場合はそもそもの時間の考え方っていうのを長めに考えているので、今回はアーケードモードをバッツリ取っちゃったんです。 そういう意味でもボールをまわしたりとかそういう部分に時間をかけることができるので、プレイヤーは “余裕を感じる” ことができるんじゃないかなと思っています。 これが一番の違いですね。 —— 画面もさらにきれいになった気がします。 三船■フィールド上の22人+審判+ベンチなどの人々の全員を動かすにはかなりの工夫が必要なのですが、ゲームキューブの処理能力が高く、すんなりと動いてくれましたので色々と付加したり見直したりしました。 モーションも気になるものを作り直したり、“ロード・トゥ・インターナショナルカップ”での演出で必要なものを追加などしています。 —— そういった見た目って大切なものだと思いますか? 三船■最近、画面の中で何が起きているのかわからないゲームが多くなったと思うんです。 例えば、複雑なゲームがあったとして、やりこんでいるプレイヤーが「あっ、今のあっちだよ!」と叫んでも後ろから見ている僕にはさっぱりわからないんですよ。何がどうなって、何がすごかったのか、画面を見てても情報がなければわからない。 だけど『バーチャストライカー』の場合は、それほどゲームをやらない人でも遊べるようにしたいっていうのが、そもそも『〜1』の時からあったんです。 他人のプレーを後ろから見ていても、見た目で何ができるのかわかるし、うまい人のプレーを見て自分だったらこうしてみよう、って想像することもできるんですね。 —— なるほど。 では、ゲームキューブのコントローラに関してなんですが、アクション部分で使うのは、やっぱり今回もレバーとボタン3個ですよね? そこにはこだわりがあるんですか? 三船■ゲームキューブ版でもアクションに必要なボタンは3個ですね。 例えば4個にすると、きっとうまい人は小指使ったりするんでしょうけど、普通は置ききれないです。本当は2ボタンにしたいくらいなんだけど、そうなると同時押ししなければいけなくなったりして逆に難しくなってしまう。だから3ボタンくらいが丁度いいのかなって思います。 大切なのはボタンを少なくすればいいわけではなく、操作がシンプルでわかりやすくなることなんです。ボタンを少なくして複雑になるようであれば本末転倒なので、それだったらボタンを増やして操作をシンプルにしようと思うわけです。 でもね、本当は使うボタンの数を増やした方が楽なんですよ。ユーザーが次に何をしたいのかという意思がそれぞれに対応したボタンを押すことによって、こちら側にわかりますから。 ところが3個のボタン+レバーだと、ユーザーがなにをしたいのかこちら側で考えなければならないんです。それが難しい。100パーセントの反映を目指しているんですが、なかなか。 —— 今回はプレイヤーが監督となってチームを育てていく“ロード・トゥ・インターナショナルカップ(以下、ロード・トゥ)”というモードがありますが、これはどういった経過で生まれたのですか? 三船■アーケードは、やはり対戦主体ですが、家庭に入ってしまうと対戦よりもむしろひとりで遊んでいる時間のほうがずっと長いですよね? そうなると家庭用で大切になってくるのは、ひとりでどうやってモチベーション持ちつづけながら遊んでいくか、になると思うんです。ドリームキャスト版(『バーチャストライカー2 ver.2000.1』)では、それができなかったんですね。 だから今回は家庭用2回目ということで、いかにひとりで遊べるものにするのか、ということをコンセプトに据えてつくっていて、そのなかで“ロード・トゥ”というモードも生まれていったんです。 —— 本作には選手がたくさん出てくるわけですが、ひとりひとりに能力値が設定されているんですか? 三船■エディットモードで選手を作った場合、目に見えるのはオフェンス、ディフェンス、フィジカル、スタミナという4本のバーなんですが、実際は目に見えないパラメータが細かく設定されています。 アーケードではもっと少なくて、その理由としてはチームごとの強弱の格差を少なくするためだったんですね。でも、コンシューマーだったらそういう格差は思いっきり広げてもいいし、より個性的な選手をつくるためにもパラメータの数を増やしたんです。 ところが、チームが64ヶ国あって、それぞれ選手が22人いるわけだから、1400人以上のデータを作らなければならなかったわけですよ。今までそういうデータベースを持っていれば良かったんですが……いやぁ、きつかったです(笑)。 —— もしかして“ロード・トゥ”や“エディット”で選手の足を速くしたら、戦術の切り替え(オフェンシブからノーマル、など)も早くなりますか? 三船■いえ、同じです。それをやっちゃうと、ボール取ったらオフェンシブ、ボール取られたらディフェンシブみたいな戦い方しちゃうんですよ。 はじめ、アーケードで出た時にも、切り替えにタイムラグ10秒くらいかかるってことが浸透してなくて、皆さんボール取ったらひたすら戦術切り替えボタンを連打、ボール取られても連打してましたからね(笑)。結局、チカチカするだけで戦術はまったく動いてないという……(笑)。 まぁ、最近は皆さん、その辺はわかっていると思うんですが、切り替えの時間を短くしてしまうと、結局かつてのようになりかねないですから(笑)。実際に監督さんが「点取りに行けー」とか指示だしても、全員に伝わるには時間がかかりますしね(笑)。 —— 激戦が予想されるファミ通カップを優位に戦うためのアドバイスを頂けますか? 三船■基本的にはどういうチームにしたいかのプランをつくった上で、エディット選手をつくったり、“ロード・トゥ”を進めていくようにすること。 例えば僕の場合だと、フォワードは2トップで、ひとりは安定してボールを受けてほしくて、もうひとりは足の速い選手がいいなっていうイメージでつくってます。 結局は練習のパートだけじゃなく、実際に試合をしている時にその選手が何をしたかによって能力値が上がっていくので、自分のスタイルやプランを持っている方が無駄なくチームをつくっていけるかな、と。 それからメンバーチェンジもできるようになったし、ポジションだけ変えることもできるので、これをうまく使うことかな? 自分のスタイルを押し通して勝てるのなら、それが一番いいけど、相手との組み合わせによってはうまくいかないかもしれない。そうなっちゃたらメンバーチェンジをしてチームの特性を変えて、対処していくということですね。 —— では、最後に『バーチャストライカー3 ver.2002』をプレーしている皆さんに、メッセージをお願いします。 三船■遊び方は何でもいいと思うんです。エディットから入るのもいいし、“ロード・トゥ”で弱い国をいかに強くするのかっていう遊び方もあるし、ひたすら最強のチームを目指すのもいいと思うんです。 サッカーは思い入れ深く幅の広いスポーツなので、プレイヤーそれぞれがしばられることなく自由に楽しく遊んでほしいなと思います。