Interview: Takenobu Mitsuyoshi (2017-12-01) by Sega Interactive (Part 2)
From Sega Retro
This is an unaltered copy of an interview of Takenobu Mitsuyoshi, for use as a primary source on Sega Retro. Please do not edit the contents below. Language: Japanese Original source: Sega Interactive (archived) |
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- Roumanji†
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CHAPTER 4 私は「歌がうまい」のではなく 「うまく聞こえるように歌うのがうまい」だけ(笑) -光吉さんは作曲だけではなくボーカリストとしても活躍されていますが、そもそもゲームの楽曲に歌を入れることになったきっかけを教えてください 歌らしい歌を入れたのは『デイトナUSA』(1993年)が最初ですね。ただ、じつはそれよりもまえに『バーチャレーシング』(1992年)の楽曲にも歌(声)が入っているんですよ。「ゴー!」、「ゲームオーバー」などといったセリフや歌が入った曲があるのですが、あれも私の声なんです(笑)。 -当時のアーケードゲームとしては、歌が入った楽曲が流れるのは珍しかったと思います。歌を入れる際に何か苦労はありましたか? MPEGなど、音質を抑えて圧縮する技術はありましたが、ゲームの楽曲に歌声をそのまま入れる下地はありませんでした。もちろん、音源チップの容量的にも制限がありました。 そこで、どうしたかと言いますと、歌を少しずつ切り刻んでいくんですよ。「デイトーナー」というフレーズをそのまま歌って収録するのではなく、「デー」、「イー」、「トー」、「ナー」と、1ワードずつ音を個別に収録して、ひとつずつキーボードにアサインし、それらを組み合わせて歌っているようにするんです。 また伸ばした音に関してはループを取っているので、例えば最後の「ナー」を伸ばし続ければ、「デイトーナーーーーー」と長く、歌わせることもできます。 メリットとしては、曲のテンポが遅くなったとしても音が切れないんですよ。少々、力技ではありますけど、当時は音源チップの容量が限られていたぶん、そのようなアイデアを持って勝負していたんですよね。歌入りの楽曲を収録した、というよりは、基板(音源チップ)が歌のように出力してくれた、というほうが正しいかもしれません(笑)。 -「日本一、歌のうまいサラリーマン」という二つ名を持つ光吉さんですが、普段からボイストレーニングはされているのでしょうか? 期待を裏切るようで申し訳ないのですが、とくにトレーニングはしていないんです。私は、「歌がうまい」のではなくて、「うまく聞こえるように歌うのがうまい」だけで(笑)。 -ボイストレーニングに代わるような経験があったりするのですか? 私が通っていた中学校は、たまたま合唱に力を入れていて、朝・昼・放課後と、毎日3回合唱の時間がありました。いま思うと、中学校の3年間がトレーニングになっていたのかもしれません。 あと、16歳から習い始めたクラッシックピアノのレッスンにあった”ソルフェージュ”と言う楽譜を読みながら歌う基礎練習も役にたったのかも。 -上手に歌うコツを教えてください! 私は、自分で”歌がうまい”とは思っていませんので、あくまで”うまく聞こえる”コツになりますが(笑)、たとえば歌にビブラート(音の揺れ)をかけてみるだけでも上手に聞こえると思います。 単純に「あーーーーー」と音を伸ばすのと、「あ~ァ~ア~ァ~」と揺らして伸ばすとのでは、ニュアンスも変わりますし、そこに歌心みたいなものも生まれてきますよね。 また、歌い終わりも、ぼそぼそっとフェードアウトするのではなく、自信を持って声を出すことで、なんとなく歌がうまそうに聞こえるんですよ(笑)。 逆に音痴に聞こえるのは、テンポが外れていることが原因だったりもします。音楽業界では”走る”と表現するのですが、曲のテンポよりも歌うのが速くなってしまうと、素人っぽい感じが出てしまう。 むしろ、曲のテンポよりもちょっと遅れて歌ったほうが、ジャズやブルースのような雰囲気が出て、いわゆる”後ノリ”みたいで格好よくなったりしますよ。 CHAPTER 5 作品のどこかに自分らしさを入れ、 それが「セガの音」だと感じてもらえるようになりたい -ゲーム音楽をつくる際、ディレクターからの要望と光吉さんが表現したいこと、このふたつのバランスはどのようにとっていますか? もちろんタイトルごとに異なってきますが、私はそのバランスをよくピラミッドにたとえています。 ピラミッドの中段から底辺、大部分を占めるところはユーザーのニーズに沿ったものを提示してクオリティーを担保します。そのうえで、ピラミッドの頂上部分に私自身のカラーやチャレンジしたいことを加えていきます。 そうしないと作品(サウンド)がマンネリ化してしまいますからね。このように、見た目(聞いた印象)は期待どおりで、さらにそこに必ず何かしらの驚きがあるパッケージングをいつも目指しています。 -ゲーム音楽づくりで、光吉さんがこだわっていることは? いまの話と重複しますが、自分らしさを作品のどこかに入れることです。 『デイトナUSA』の楽曲に自分の歌を入れたころから、仕事に対するコンセプトが少しずつ形づくられていった感があります。作品のどこかに自分らしさをいれること、つくり手のこだわりや個性が見える音、それが最終的に「セガの音」だと言ってもらいたくて、仕事を続けている部分はありますね。 私の場合は「ゲームのBGMなのに歌ばっかり入ってるな」というように、いい意味で”斜め上”なセガらしさを出せるように、つねに心掛けています。 -光吉さんがこれはと思ったゲーム音楽は? 他社さんのタイトルですが、『スカイリム』(2011年/ベセスダ・ソフトワークス)の音楽が良かったです。とくに、曲の出るタイミングが絶妙なんですよ。ふわっと、気が付くと流れていて、しかもシチュエーションに合った曲が流れているんですよね。 楽曲制作は”打ち込み”と聞いているのですが、すごく自然なオーケストラのような音楽でとても気に入っています。 -光吉さんが関わった作品のなかで、とくに気に入っている楽曲は? そうですね、ここで『デイトナUSA』と言ってもひねりがありませんので(笑)、あえてセガサターン用ソフト『バーニングレンジャー』(1998年)の主題歌『Burning Hearts ~炎のANGEL~』にします。 私は歌を歌っただけなのですが、この曲のおかげで歌手としてのオファーが増えたんですよ。また、最近、『ファンタシースターオンライン2』(2012年~)でも、この曲が使われました。作曲が同期の幡谷尚史(※)氏だったり、この曲が『デイトナ USA 2』のNYレコーディングにもつながっていったりなど、いろいろな広がりや、お世話になった点が多いという意味で、とても印象に残っている曲ですね。 (※)幡谷尚史:1990年セガ入社。現在、株式会社セガゲームスに所属。代表作に『きみのためなら死ねる』『リズム怪盗R』など。 CHAPTER 6 将来の夢は、自分が歌ってきた楽曲で ディナーショーを開くこと -昨今のプロモーション活動について教えていただけますか? ここ最近は、自身が担当している音楽ゲームに関わるイベントやライブを中心に出演しています。また『ファンタシースターオンライン2』など、歌を歌わせてもらっているタイトルのイベントにも出演させていただいています。近ごろは、サウンドコンポーザーというよりも、歌手・光吉猛修としての活動が多いかもしれません(笑)。 -若いゲームファンは、歌手としての光吉さんしか知らない、という人も多いかもしれませんね 歌手活動を通して若い世代の方にも知っていただく機会が増えて、すごくありがたいです。 たぶん最初は、『maimai』や『チュウニズム』で、「なんか知らないけど、おっさんが歌っている楽曲がゲーム内に入っているぞ?」から始まって、ネットで検索してみたら「セガの社員だったの!?」みたいな(笑)。そのような経緯で、知っていただくことも面白いですよね。 私は、そういう驚きを今後も提供していきたいと思っています。これはさまざまな人に伝えているのですが、将来、これまでに自分が歌ってきた楽曲でディナーショーを開催したいんです(笑)。 そこで新たに”光吉猛修”を知る人がいればうれしいし、また私を通して、セガという会社、そしてゲームの魅力を伝えられればもっとうれしい。最終的には、その人たちがゲームセンターに足を運んでくれれば、私の生涯におけるひとつのミッションが達成できるかな、と思っています。 -そんな光吉さんが思う、セガ・インタラクティブの魅力を教えてください ゲームを通してはもちろんですが、ライブやイベントなど、ユーザーの方々とのふれあいを通じて、楽しさや感動の“共感”が生まれることがあります。“共感”は、私だけでなく、その作品やイベントを精魂こめて用意したスタッフはもとより、楽しもう、盛り上げようとしてくださっているユーザーの方々含め、みんなで創られます。そのような“共感”を創造していける土壌があることが、セガ・インタラクティブの最大の魅力だと思います。“共感”を創造する醍醐味をこの会社で体験してきたからこそ、先ほどお話したようにディナーショーが夢だったりします。 また、自身の名前や作品を海外の方々に知って頂けるチャンスがあるという点も、この会社の魅力のひとつと感じています。 とくに海外では、その知名度に助けてもらうことが多いです。海外出張の際、自己紹介の時に会社の名前を出すだけで、「セガのゲーム、知ってるよ!」と互いに打ち解け合うことができる。そういう意味では、世界も視野に入れて音楽をつくる人にとっては、とても条件の良い会社だと思います。 -最後に、ゲームのサウンド制作の仕事を目指しているひとたちにアドバイスをお願いします 技術的な部分に関わる勉強は、可能な限り行っておくのはもちろんですが、私が声を大にして伝えたいのは、”発想の大切さ”です。 わかりやすく言えば、誰もやっていないことを考えよう、ということ。 私の作品制作では、”逆転の発想”をコンセプトにしています。 いますでにあるものを逆に捉えると、誰もやっていないことに繋がる場合があります。 それまで歌が入っていなかったゲームの楽曲に、『デイトナUSA』で歌を取り入れたのも、逆転の発想によるものです。 発想から得たアイディアを音楽としてどうやって表現していくか考えることで、そこに新しい作品が生まれるのだと思っています。 ぜひ、柔らかい頭を持ってください。そして誰もやったことがないことにチャレンジして欲しいと思います。 編集・執筆:ローリング内沢、村田征二朗